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HubSpotを「マーケティング」と「営業」のツールとしてだけ使っていませんか。HubSpotには「Data Hub」という、データ統合・業務自動化に特化した機能群が用意されています。Data Hubは、CRMを「営業ツール」から「事業基盤」に進化させるための中核機能です。
データの同期、クレンジング、カスタムコードによるプログラマブルな自動化。これらの機能を使いこなすことで、HubSpotは単なるCRMを超え、社内のあらゆるシステムをつなぐハブとして機能するようになります。
本記事では、HubSpot Data Hubの主要機能を整理し、データ同期・カスタムコードアクション・業務自動化の3つの軸で、実践的な活用設計を解説します。
本記事は「CRMを起点としたバックオフィス統合の設計思想|フロントとバックをつなぐ事業基盤」シリーズの一部です。
本記事はStartLinkの「BtoBマーケティング完全ガイド」関連記事です。
この記事でわかること
- HubSpot Data Hubの機能体系と各プランでの利用範囲
- データ同期機能による外部ツール連携の設計方法
- カスタムコードアクションの実践的なユースケース
- データ品質管理の自動化(重複排除、フォーマット統一)
- プログラマブルオートメーションで実現する高度な業務自動化
本記事では、HubSpotの活用における重要なポイントを体系的にまとめています。導入前の検討段階から運用改善まで、どのフェーズにいる方にも参考になる内容ですので、ぜひ最後までお読みください。
HubSpot Data Hubの全体像
| 項目 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 目的 | データ同期・業務自動化の最適化 | 明確なKGI/KPI設定が重要 |
| 対象 | 営業・マーケティング部門 | 部門横断での連携が成果を左右 |
| 期間 | 3〜6ヶ月で初期成果 | 段階的な導入がリスクを軽減 |
| ツール | HubSpot CRM推奨 | データの一元管理で効率化 |
| 効果 | 業務効率30〜50%改善 | 継続的な改善で効果が拡大 |
Data Hubとは何か
Data Hubは、HubSpotプラットフォーム内のデータ統合・自動化機能群の総称です。マーケティング、営業、CSの各Hubが「何をするか」を担うのに対し、Data Hubは「データをどう扱うか」を担います。
Data Hubの主要機能は以下の5つに整理できます。
- データ同期(Data Sync): 外部ツールとのデータ双方向同期
- データ品質管理(Data Quality): 重複排除、フォーマット統一、データ修正の自動化
- カスタムコードアクション: ワークフロー内でJavaScript(Node.js)を実行
- プログラマブルオートメーション: Webhookやカスタムコードを組み合わせた高度な自動化
- データセット(Datasets): カスタムレポート用のデータ集計・加工
各プランで利用できる機能
Data Hubの機能は、HubSpotのプランによって利用範囲が異なります。
- 無料プラン: データ同期(基本機能のみ)
- Starter: データ同期(フルバージョン)
- Professional: データ品質管理、カスタムコードアクション、プログラマブルオートメーション
- Enterprise: データセット、高度なデータ品質ツール、サンドボックス環境
カスタムコードアクションやプログラマブルオートメーションはProfessional以上で利用可能です。本格的なData Hub活用を検討する場合は、Professional以上のプランが前提になります。
データ同期(Data Sync)の設計
HubSpotネイティブのデータ同期
Data Hubのデータ同期機能は、外部ツールのデータをHubSpotと双方向で同期する仕組みです。100以上のツールとのConnectorが標準提供されており、設定画面からノーコードで同期を開始できます。
主な連携先として以下のツールが挙げられます。
- Google Contacts / Microsoft 365: 連絡先データの双方向同期
- QuickBooks / Xero: 会計データの同期(海外ツール向け)
- Mailchimp: メールマーケティングデータの同期
- Intercom / Zendesk: サポートチケットデータの同期
データ同期の設計ポイント
データ同期を設計する際に、以下の3点を事前に定義しておくことが重要です。
同期方向の決定
各データ項目について、以下のいずれかを選択します。
- HubSpot → 外部ツール(HubSpotがマスター)
- 外部ツール → HubSpot(外部ツールがマスター)
- 双方向(最新の更新が優先)
フィールドマッピング
HubSpotのプロパティと外部ツールのフィールドを対応付けます。名前が異なるフィールド(例:HubSpotの「会社名」と外部ツールの「法人名」)を正しくマッピングする必要があります。
フィルタリング条件
「すべてのレコードを同期する」のではなく、「特定の条件に合致するレコードだけを同期する」設計にすることで、不要なデータの流入を防ぎます。たとえば、「ライフサイクルステージが"顧客"のコンタクトのみを会計ソフトに同期する」といった条件設定です。
日本のSaaSとの連携
Data Hubのネイティブ同期は、グローバルツールとの連携が中心です。freee、マネーフォワード、Sansan、ChatworkなどのJapan SaaSとの連携は、ネイティブConnectorではカバーされていません。
日本のSaaSとの連携には、以下のアプローチが必要です。
- iPaaS(Yoom、Zapier、Make)を経由した連携。iPaaSの選び方や設計パターンはiPaaS / API連携で構築する統合業務基盤で詳しく解説しています。iPaaS(Yoom、Zapier、Make)を経由した連携: 最も手軽なアプローチ
- Data Hubのカスタムコードアクション: ワークフロー内からAPIを直接呼び出す
- HubSpot APIとカスタムアプリ: 最も柔軟だが開発コストが高い
カスタムコードアクションの実践
カスタムコードアクションとは
カスタムコードアクションは、HubSpotのワークフロー内でNode.js(JavaScript)のコードを実行できる機能です。ワークフローの「アクション」としてコードブロックを追加し、外部APIの呼び出し、データの変換・加工、条件分岐ロジックの実装が可能です。
ユースケース1:freee APIとの直接連携
HubSpotの取引が「受注」ステージに移行したタイミングで、カスタムコードからfreee APIを呼び出し、請求書を自動作成する処理を実装できます。
iPaaSを経由しないため、以下のメリットがあります。
- iPaaSの月額費用が不要
- データの流れがHubSpot → freeeのシンプルな1ステップで完結
- ワークフローの管理画面内でコードの確認・修正が可能
ユースケース2:Slack通知のカスタマイズ
標準のSlack連携では「テンプレート通りの通知」しかできませんが、カスタムコードを使えば、通知内容を完全にカスタマイズできます。
たとえば、取引金額が100万円以上の受注が発生した際に、取引の詳細情報(顧客名、金額、担当者、受注理由)を整形して、Slack Incoming Webhookで特定のチャンネルにリッチな通知を送るといった実装が可能です。
ユースケース3:データ変換・加工
外部システムに連携する前にデータのフォーマットを変換する処理も、カスタムコードで実装できます。
- 電話番号のフォーマット統一(ハイフンの有無、国番号の付与)
- 住所の分割・結合(都道府県、市区町村、番地を分離)
- 日付フォーマットの変換(YYYY/MM/DD → YYYY-MM-DDなど)
- 金額の税抜/税込変換
カスタムコードの制約事項
カスタムコードアクションには以下の制約があります。設計時に考慮してください。
- 実行時間: 最大20秒(タイムアウト超過でエラー)
- メモリ: 128MB
- 外部ライブラリ: 一部のNode.jsライブラリのみ利用可能(axiosは利用可)
- シークレット管理: APIキー等はワークフローのシークレットに保存し、コードから参照
データ品質管理の自動化
重複レコードの管理
Data Hubのデータ品質ツールは、重複レコードを自動検出し、統合候補として提示します。完全一致だけでなく、表記揺れ(「株式会社ABC」と「(株)ABC」)も検出できるファジーマッチ機能が搭載されています。
重複管理を効果的に運用するためのポイントは以下の通りです。
- マッチングルール(どのプロパティで重複を判定するか)を事前に定義
- 統合時に「どちらのレコードのデータを優先するか」のルールを決めておく
- 定期的に重複レビューを実施する運用ルールを設ける
プロパティのフォーマット統一
Data Hubの「フォーマットアクション」を使えば、ワークフロー内でプロパティの値を自動修正できます。CRM運用全体のルール設計についてはCRM運用ルール設計ガイドも参照してください。
- 会社名の大文字/小文字の統一
- 電話番号のフォーマット統一
- 都道府県名の正規化(「東京」→「東京都」)
- 不要な空白の除去
これらの自動修正をコンタクト作成時や更新時のワークフローに組み込むことで、データの品質を常に一定レベルに保つことができます。
プログラマブルオートメーションの設計パターン
パターン1:Webhookによるリアルタイム連携
HubSpotのワークフローからWebhookを送信し、外部システムのAPIエンドポイントを呼び出すことで、リアルタイムのデータ連携を実現します。
たとえば、HubSpotでフォームが送信されたタイミングで、自社の基幹システムにリード情報をWebhook経由で即時連携するといった設計です。
パターン2:マルチステップの業務自動化
カスタムコードアクションを複数のステップで組み合わせることで、複雑な業務ロジックを自動化できます。
例として、「見積もり承認フロー」を設計する場合を考えてみましょう。
- 営業が見積もりを作成
- ワークフローが発火し、カスタムコードで承認ルートを自動判定(金額、商品カテゴリ、顧客ランクに応じて承認者が変わる)
- 承認依頼のメールを自動送信
- 承認完了後、見積もりPDFを自動生成し、顧客に送付
- 見積もりの有効期限管理(期限切れ前のリマインド通知)
パターン3:データエンリッチメント
外部のデータソースから情報を自動取得し、CRMのレコードを充実させる処理です。
- 法人番号APIで企業情報を自動取得
- SNSプロフィールから担当者情報を補完
- Breeze Intelligenceによる企業データの自動付与
Data Hub活用のロードマップ
Phase 1:データ品質の整備(1〜2ヶ月)
Data Hub活用の出発点は、既存データの品質改善です。重複レコードの統合、プロパティのフォーマット統一、不要データの削除を実施します。
Phase 2:基本的なデータ同期の導入(2〜3ヶ月)
ネイティブConnectorで対応できる外部ツールとのデータ同期を設定します。Google Contacts、Microsoft 365など、利用頻度の高いツールから始めます。
Phase 3:カスタムコードによる業務自動化(3〜6ヶ月)
iPaaSでは対応しきれない連携や、カスタムロジックが必要な業務自動化をカスタムコードアクションで実装します。freee連携、Slack通知のカスタマイズなど、業務インパクトの大きいものから着手します。
Phase 4:全社的なデータ統合基盤の構築(6〜12ヶ月)
HubSpotをデータハブ(中心)として、社内の主要システム(会計、人事、プロジェクト管理等)のデータを統合します。データセット機能を使った経営レポートの構築も、このフェーズで取り組みます。
HubSpotで実現するHubSpot Data Hubの活用設計
HubSpot Data Hubの活用設計を実務に落とし込むには、CRMツールの活用が不可欠です。詳しくは「HubSpot Data Hub(旧Operations Hub)とは?データ同期・自動化・レポート機能を徹底解説」で解説しています。
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まとめ
HubSpot Data Hubは、CRMを「営業ツール」から「事業のデータ統合基盤」に進化させるための中核機能です。データ同期、データ品質管理、カスタムコードアクション、プログラマブルオートメーションの4つの機能を組み合わせることで、HubSpotは社内システム間のデータハブとして機能するようになります。
特に日本企業にとっては、freee・マネーフォワードとの会計連携、Sansanとの名刺データ連携、Chatworkとの通知連携など、Japan SaaSとの接続にカスタムコードアクションが威力を発揮します。
まずはデータ品質の整備から着手し、データ同期、カスタムコード連携と段階的に活用範囲を広げていくことで、Data Hubの価値を最大限に引き出すことができます。
よくある質問(FAQ)
Q. Data Hubを使うにはどのプランが必要ですか?
データ同期の基本機能は無料プランから利用できます。ただし、カスタムコードアクション、データ品質管理ツール、プログラマブルオートメーションなどの実践的な機能はProfessional以上のプランが必要です。本格的にData Hubを活用する場合は、Professional以上をお勧めします。
Q. カスタムコードアクションにはプログラミングスキルが必要ですか?
JavaScript(Node.js)の基本的な知識が必要です。ただし、処理内容がシンプルであれば(API呼び出しとデータ変換程度)、数十行のコードで実装できます。社内にJavaScriptの知識を持つメンバーがいない場合は、初期構築を外部パートナーに依頼し、運用は社内で行う体制が現実的です。
Q. Data Hubのデータ同期とiPaaS(Yoom・Zapier)はどう使い分ければよいですか?
Data Hubのネイティブ同期は、「常時同期」に適しています。レコードが更新されるたびに自動で同期が実行されるため、リアルタイム性が求められる連携に向いています。一方、iPaaSは「イベント駆動」の連携(受注時に請求書を作成する等)に適しています。両者を併用し、データの性質に応じて使い分けるのがベストプラクティスです。
Q. Data Hubで日本の会計ソフトと直接連携できますか?
Data Hubのネイティブ同期では、freeeやマネーフォワードとの直接連携はサポートされていません。日本の会計ソフトとの連携には、カスタムコードアクションでAPIを直接呼び出す方法か、iPaaS(Yoom等)を経由する方法のいずれかを選択します。カスタムコードアクションの方が柔軟性は高いですが、開発スキルが必要です。
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。