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ワークフローシステムの導入を検討する際、市場には数十のツールが存在し、どれを選べばよいか判断に迷うケースが多くあります。ITR(アイ・ティ・アール)の調査によると、ワークフローシステムの導入企業の約30%が「最初に選んだツールが自社に合わず、2年以内にリプレイスしている」と回答しています。
ワークフローシステムの選定で重要なのは、機能の多さやブランドの知名度ではなく、「自社の業務特性と導入目的に合っているか」です。申請業務の電子化が主目的なのか、業務プロセス全体の自動化を目指すのかで、最適なツールは大きく異なります。SaaS全般の選び方については、業務効率化ツールの選び方|目的別SaaS比較と導入判断のフレームワークも参考にしてください。
本記事では、主要なワークフローシステムの特徴と比較、企業規模・用途別の選定基準を解説します。
この記事でわかること
ワークフローシステムの導入企業の約30%が2年以内にリプレイスしているという調査結果があり、初期選定の重要性は極めて高いです。本記事では、自社の業務特性と導入目的に合ったツールを選ぶための比較基準と判断軸を提示します。
こんな方におすすめ: ワークフローシステムの導入を検討中で、どのツールが自社に合うか判断に迷っている情報システム部門・管理部門の方
- ワークフロー専用型・グループウェア型・業務アプリ型の3カテゴリの特徴と選定時の考え方
- kintone・ジョブカン・サイボウズ Office・X-point Cloudなど主要ツールの機能・価格・連携性の比較
- 企業規模別(50名以下・50〜300名・300名以上)のおすすめツールと選定理由
- 承認ルート柔軟性・モバイル対応・API連携など、選定時に確認すべき10の評価項目
- CRMとワークフローシステムを連携させて業務全体を最適化する設計パターン
ワークフローシステムの3つのカテゴリ
カテゴリ1:ワークフロー専用型
ワークフロー(承認・申請プロセス)に特化したシステムです。承認ルートの設計、条件分岐、代理承認、電子署名といった機能が充実しています。
代表的なツールは、X-point Cloud、コラボフロー、AgileWorks、楽々WorkflowIIなどです。承認フローの設計自由度が高く、複雑な承認ルート(並列承認・合議承認・金額別ルート分岐等)に対応できるのが強みです。
カテゴリ2:グループウェア統合型
グループウェアの機能の一部としてワークフロー機能が提供されるタイプです。メール・スケジュール・掲示板・ファイル管理と一体化されており、追加費用なしでワークフロー機能を利用できる場合が多くあります。
代表的なツールは、サイボウズ Office、サイボウズ Garoon、desknet's NEOなどです。既にグループウェアを利用している企業であれば、新たにツールを導入する必要がなく、利用者のUI/UXも統一できるメリットがあります。
カテゴリ3:業務アプリケーションプラットフォーム型
ワークフローに限らず、業務アプリケーション全般を構築できるプラットフォームです。ワークフローはその機能の一部であり、データベース・レポート・通知・外部連携を含む業務システム全体を構築できます。
代表的なツールは、kintone、Microsoft Power Platform(Power Automate)、Salesforce Flowなどです。ワークフローだけでなく、顧客管理・案件管理・在庫管理などの業務アプリケーションもあわせて構築したい企業に適しています。
主要ツールの比較
kintone(サイボウズ)
kintoneは、サイボウズが提供する業務アプリケーションプラットフォームです。ノーコードで業務アプリケーションを構築でき、その中にワークフロー(プロセス管理)機能が含まれています。ノーコードでの自動化の詳しい活用法は、ワークフロー自動化をノーコードで実現する方法で解説しています。
強み:
- ノーコードで業務アプリを構築でき、ワークフローはその一機能として利用できる
- アプリ間のデータ連携が可能で、申請データを他の業務アプリと統合できる
- プラグインやカスタマイズ性が高く、外部サービスとのAPI連携も充実
- 月額1,500円/ユーザー(スタンダードコース)からのコスト感
注意点:
- ワークフロー専用ツールと比較すると、承認ルートの設計自由度(並列承認・合議承認等)がやや限定的
- 複雑な条件分岐を実現するにはプラグインやカスタマイズが必要
- ワークフローだけを使いたい場合はオーバースペックになる可能性
適した企業: ワークフローだけでなく、業務アプリケーション全体をノーコードで構築・管理したい中堅企業
ジョブカンワークフロー
ジョブカンワークフローは、DONUTS社が提供するクラウド型ワークフローシステムです。同シリーズの勤怠管理・経費精算・労務管理との連携が特徴です。
強み:
- 月額300円/ユーザーからの低コストで導入できる
- ジョブカンシリーズ(勤怠・経費精算・労務HR・給与計算)との統合が容易
- 50種類以上のテンプレートが用意されており、すぐに利用開始できる
- スマートフォンからの承認に対応
注意点:
- 高度な条件分岐(金額帯別の承認者自動変更等)には対応が限定的
- 業務アプリケーションの構築機能はなく、ワークフロー(申請・承認)に特化
- ジョブカンシリーズ以外のツールとの連携はAPI経由で別途開発が必要
適した企業: コストを抑えてシンプルな承認フローを電子化したい中小企業。ジョブカンシリーズを既に利用している企業
サイボウズ Office
サイボウズ Officeは、中小企業向けのグループウェアです。メール・スケジュール・掲示板と一体化されたワークフロー機能が含まれています。
強み:
- グループウェアの一機能としてワークフローが含まれるため、追加コストなし(月額800円/ユーザー〜)
- シンプルな承認ルートの設計に向いており、ITリテラシーが高くない組織でも導入しやすい
- スケジュール・掲示板・ファイル管理との統合されたUI/UX
注意点:
- ワークフロー専用ツールと比較して、承認ルートの設計自由度は限定的
- 300名以上の組織には機能が不足する可能性(大規模向けはGaroonを推奨)
- 外部システムとのAPI連携は限定的
適した企業: 50名以下の中小企業で、グループウェアとワークフローをまとめて導入したいケース
X-point Cloud(エイトレッド)
X-point Cloudは、エイトレッドが提供するワークフロー専用のクラウドサービスです。紙の申請書イメージそのままの画面設計が特徴です。
強み:
- 紙の申請書レイアウトをそのまま電子フォームに再現できる(移行時の抵抗が少ない)
- 並列承認・合議承認・条件分岐・代理承認など高度な承認ルート設計に対応
- 電子帳簿保存法対応の監査証跡機能が充実
- 日本の商慣習(根回し・合議制)に最適化された設計
注意点:
- 月額500円/ユーザー〜(上位版のAgileWorksは要問い合わせ)
- ワークフロー専用のため、業務アプリケーション構築機能はない
- 初期設定(フォーム作成・ルート設計)にはある程度のIT知識が必要
適した企業: 複雑な承認ルートを持つ中堅〜大企業。紙の稟議文化が根強い組織
主要ワークフローシステム比較表
| ツール名 | カテゴリ | 月額費用(1ユーザー) | 承認ルート設計 | 主な強み | 適した企業規模 |
|---|---|---|---|---|---|
| kintone | アプリプラットフォーム型 | 1,500円〜 | 標準(プラグインで拡張可) | ノーコードで業務アプリ全体を構築 | 50〜300名 |
| ジョブカンワークフロー | ワークフロー専用型 | 300円〜 | シンプル | 低コスト・ジョブカンシリーズ連携 | 50名以下 |
| サイボウズ Office | グループウェア統合型 | 800円〜 | シンプル | グループウェア一体型で追加コスト不要 | 50名以下 |
| X-point Cloud | ワークフロー専用型 | 500円〜 | 高度(並列・合議・条件分岐) | 紙の申請書イメージを再現・監査対応 | 100〜300名以上 |
| AgileWorks | ワークフロー専用型 | 要問い合わせ | 非常に高度 | 大規模組織の複雑な承認ルートに対応 | 300名以上 |
企業規模別の推奨ツール
50名以下の中小企業
ワークフロー専用ツールを導入するよりも、グループウェアの付属機能か、既存の業務ツール(freee・マネーフォワード等)の承認機能を活用するのが現実的です。
- グループウェア未導入: サイボウズ Office(グループウェア+ワークフロー)
- 経費精算が主目的: freee会計 または マネーフォワードクラウド経費
- シンプルな承認フロー: ジョブカンワークフロー
50〜300名の中堅企業
業務プロセス全体を整備したいか、ワークフロー(承認フロー)に特化したいかで判断が分かれます。
- 業務アプリ全体を構築: kintone
- 承認フローに特化: X-point Cloud またはコラボフロー
- 勤怠・経費と統合: ジョブカンシリーズ
300名以上の大企業
承認ルートの複雑さ(部門別・金額帯別・地域別の分岐)と監査要件に対応できるツールが必要です。
- ワークフロー専用: AgileWorks(X-point Cloudの上位版)、楽々WorkflowII
- グループウェア統合: サイボウズ Garoon
- ERP連携: SAP Concur、Oracle Fusion
選定時に確認すべき10の評価項目
ワークフローシステムを比較する際に、以下の10項目でスコアリングすることを推奨します。
- 承認ルート設計の自由度: 条件分岐・並列承認・合議承認に対応しているか
- フォーム設計の柔軟性: 自社の申請書フォーマットを再現できるか
- モバイル対応: スマートフォンからの申請・承認が快適に行えるか
- 既存システムとの連携: 会計ソフト・勤怠管理・CRM等とのデータ連携が可能か
- 代理承認・エスカレーション: 承認者不在時の代替処理に対応しているか
- 監査証跡: 承認履歴の改ざん防止・長期保存に対応しているか
- 初期設定の容易さ: フォーム作成・ルート設計を自社内で完結できるか
- ユーザー数の拡張性: 組織の成長に伴うユーザー数増加にコスト面で対応できるか
- サポート体制: 導入支援・運用サポートが日本語で受けられるか
- コスト: 初期費用・月額費用・オプション費用の総額
CRM×ワークフロー連携の可能性
営業プロセスとワークフローの統合
ワークフローシステムの選定時に見落とされがちなのが、CRM/SFAとの連携です。営業部門では、見積承認・値引き申請・契約条件の変更といった承認フローが日常的に発生しますが、これらがワークフローシステムとCRM/SFAで分離していると、データの二重入力や転記ミスが発生します。
HubSpotのワークフロー機能では、商談の金額やステージに応じた承認プロセスを自動化できます。たとえば、商談金額が500万円以上の場合に自動的にマネージャーの承認タスクを作成し、承認完了後に見積書を自動送付するフローが構築可能です。
「ワークフローシステム+CRM連携」vs「CRM内蔵ワークフロー」
ワークフローシステムを別途導入してCRMとAPI連携するか、CRMに内蔵されたワークフロー機能を使うかは、業務の複雑さと運用コストのバランスで判断します。
- CRM内蔵ワークフローが適するケース: 営業関連の承認フローが中心で、バックオフィスのワークフローは会計ソフト等で別途管理している
- ワークフロー専用ツール+CRM連携が適するケース: 営業だけでなく全社的な承認フロー(経費・購買・人事等)を統合管理し、そのデータをCRMと連携したい
NTTデータでは、SAP Concur(ワークフロー)とSalesforce(CRM)をAPI連携させ、購買承認データと営業データを統合的に管理する体制を構築しています。
まとめ
ワークフローシステムの選定は、「ワークフロー専用型」「グループウェア統合型」「業務アプリプラットフォーム型」の3カテゴリを理解した上で、自社の企業規模・導入目的・既存システムとの連携要件で判断します。kintoneは業務アプリ全体の構築に、ジョブカンはコスト重視のシンプルな電子化に、X-point Cloudは複雑な承認ルート設計にそれぞれ強みがあります。加えて、CRM/SFAとの連携を選定基準に含めることで、営業プロセスを含めた全社的なワークフロー最適化が実現できます。バックオフィスSaaS全体の連携戦略はバックオフィスSaaS連携を、総務部門のDX全体像については総務DXの進め方もあわせてご覧ください。
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。